ハワイ行き飛行機の中は逃げ場のない地獄だった

唐突ではあるが、3月中旬に3泊5日で義理の両親と義理の姉家族の10名でハワイへ旅行に行ってきた。

 

なんともありがたいことに義理の両親が旅行費用をだしてくれた。
私たち夫婦が結婚した際に新婚旅行に行っていなかったのを気遣ってのことだ。

 

合計10名の大人数の旅費をポーンッと出せる義理の両親は懐が深く、とても自分では同じような状況でも旅費を出すなんてことは考えられないなと、器の小ささをお財布事情の心もとなさを実感したと同時に大変にありがたく思った。


この円安の環境の中、経済的に大丈夫かなと一抹の不安をよそに、あれよあれよとハワイ旅行の日程が近づき、気づけばハワイ行きの飛行機の中にいた。

この飛行機は日本時間の深夜にフライトして、ハワイの現地時間で朝に着くという行程だ。

 

これから行きの飛行機は約6~7時間ほどかかる。

現地ハワイでのスムーズな行動開始に備え、とりあえずは睡眠を確保していきたいところ、みながそう考えているはず。

 

ところがそんな思惑もあっという間に砕け散った。

 

そう、私たち家族には1歳半になる息子がいる。

落ち着きのなさと癇癪持ちは誰かに似て天下一品だ。

 

当然、息子が時間を潰せるように小道具なども持参したのだが、飛行機の上では一瞬、息子の気を引けるだけで、即座に旅行バックの容量を無駄に喰う文字通りただのお荷物と化した。

 

思ったより6時間は長い。

 

前回、沖縄旅行では2~3時間のフライトに加え、まだ1歳に満たなかったので、膝の上でおとなしくしてくれた。

 

ただ今回の息子はせっかく手に入れた2足歩行の特技がある。

当然、1か所におとなしく座っているわけもなく、動き回りたいと体をくねらせる。

それを阻止する私たち夫婦。

 

一時、眠りにつくが、慣れない機内のせいか、はたまたCAがやたら巡回してくるせいか、数時間で目が覚めてしまった。

 

代わりばんこに息子をあやしたり相手をしたりするが、それも時間の問題だった。

 

思い通りにならない息子は、奇声を発し暴れだす。

天使が悪魔になる瞬間だ。

 

機内は日本時間で深夜帯にあたる。

搭乗客のみなも睡眠をとりたいに決まっている、私も知っている。

 

私たち夫婦と息子との攻防が繰り広げられる中、後ろの席から「うるさい」という発声が私の耳に入ってきた。

一瞬、耳を疑った。

それは我が息子や私たち家族に向けられた言葉なのだろうか。

お気楽な神経で恐縮だが、これぐらいの子どものグズりには良い大人である皆さまは寛容ではないのだろうか、と。

 

一気に他の搭乗客の皆様にご迷惑をお掛けしているといういたたまれない気持ちになった。

必死に息子の機嫌をとろうとするが、逃げ場のない機内のシチュエーションも相まって息子のボルテージも限界まであがってしまう。

 

また「うるさい」と聞こえた。

どうやら同じご年配の女性の方が発声している。

 

申し訳ない。

 

でも私たち夫婦もどうにかこの状況を打破したいが、どうにもできない。

その後も状況が変わらないため、「うるさい」を連発。

そして極めつけに「席最悪」との一言。

 

当然、私たち家族が他の搭乗客の皆さまにご迷惑をお掛けして、本来、快適であるはずの空の旅を台無しにしているのは自覚している。

 

心の中で思うのは個人の自由で勝手だ。

だがしかし、ここまで声に出して言われると話は変わってくる。

 

賛否両論あるが、私からすると「うるさい」を連発しているおばさんが一番うるさい。

いちいち声に出して言うことに意義があるのだろうか。

多少なりともそれで気が済めば話は別だが。

 

その後もひとしきり騒いでやっとおとなしくなった息子だったが、なんとか無事、ハワイのダニエルKイノウエ国際空港に到着することができた。

 

そして飛行機の降車着前に「うるさいおばさん」からの私たち夫婦を睨みつけるよう一瞥をくれてくれる。

 

こちらも我慢できずに皮肉めいた感じで、「うるさくしてどうもすみませんでした」ぐらいは言ってやろうかと思ったが、義理の両親の手前、それを端に発して大事になるのも面倒なのでやめておいた。

 

妻からは、おばさんに言い返したら一緒だよと言われ、おばさんに対する「お前が一番うるさいんじゃ!」という言葉をそっと心の奥底にしまいこんだ。

 

ハワイに着いたと同時に睡眠不足と「うるさいおばさん」のせいで、なんとも言えないやりきれない消化不良の気持ちを抱えた1日がスタートしたのであった。